
マンションの一住戸が暴力団事務所として使用されている場合の対応 |
マンションの理事長をやっている者です。何の標識も看板もないので、外から見ているだけでは分からなかったのですが、警察からの問合せで3ヶ月前に私の住んでいるマンションに新たに入居した人が実は暴力団の構成員で、現在事務所として使用していることが最近判明しました。 事務所には常時4、5人が詰めているようですが、極力居住者の目につく時間帯は避けて、目立たないようにしており、今のところ、居住者が具体的な被害に遭ったり、恐怖を感じたりすることはないようです。しかし、このマンションが犯罪に使われたり、抗争に巻き込まれたりする可能性もあり怖いので、なんとか退去して欲しいのですが、どういう手段を用いればいいのでしょうか。 |
ご質問と同じように、マンションに暴力団の構成員が入居して困っているという話をよく聞きます。マンションは建物が堅牢であり、また居住者間であまり干渉しないという特徴から暴力団員が入居しやすい環境になっていますが、隣に入られた人は、抗争に巻き込まれないか、因縁をつけられるのではないか、など不安が一杯になり、とてもマンションライフを楽しむどころではなくなります。 お問合せの内容によると、該当する居室が組事務所であるような表示もないようですし、また具体的な被害や、恐怖を感じるような言動もないようですが、この入居者が仮に明らかに暴力団員であったとしても単に暴力団員だからという理由で追い出すことは難しいでしょう。 具体的に事務所を利用する組構成員が区分所有法でいうところの共同の利益に反する行為が明らかに繰り返されている、といった状況でないと追い出しは難しいと考えられます。そのためにはこの事務所の利用状況や組構成員や来客者の居室への出入り状況を綿密に記録に残しておくことから始めてみてはいかがでしょうか。 専有部分の用途制限にしても継続的に組事務所として利用していることを、客観的に裏付ける資料や記録が必要でしょうし、さらにそうした具体的な記録等をもとに、当該居室を組事務所として使用することの差止めを求めたり、管理組合から組事務所に対して居室の買取りを請求したりすることを通して追い出しの実効を図る必要が出てきたりしますので、相当の覚悟と時間を掛け粘り強くことを進めていく必要があります。
過去の実例として、理事長が名義人となり暴力団の住戸を買い取ることになったケースがあります。これは2005年12月5日に福岡地裁に事務所使用差し止めの仮処分と住戸の執行官保管を求めたもので、最終的にこの請求を認めた地裁決定に対し異議を申し立てていた暴力団側と住民側の間で話し合い、理事長名義で該当住戸を買い取ることで和解に至ったものです。 但し、このケースは暴力団の組長が当該住戸の区分所有者で居住しており、抗争相手の暴力団から拳銃等で襲撃を受けるという発砲事件があり、実害が出ていたというかなり特殊なケースなので、さほど一般性はないかもしれません。通常のケースでは、区分所有法第57条~60条の「義務違反者に対する措置」を適用して対応していくのが有効と考えられます。
ここでいう「義務違反」とは「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為(区分所有法6条1項)」のことで、日常生活で互いがルールを守り良好な住環境を維持することを阻害する、あるいは悪影響を与えるということです。 暴力団事務所を撤去させようとすると、一般的には上述の規定に基づき、訴訟を提起する必要があるでしょうが、判決が出るまでは強制執行もできないので、福岡地裁の事案では組事務所としての使用の差し止めの仮処分を請求し、その差し止めを実効性のあるものにするために、暴力団から事務所の占有を取り上げ、執行官が保管するという方法(これが執行官保管)が取られました。
なお、これらの請求を行う場合は、総会における議決が必要となります。
また、今回のケースは既に入居しているケースですが、事前の対策として、管理規約に、暴力団構成員の区分所有権の取得や賃貸等を禁止する条文を入れておくことも暴力団に対する牽制になるでしょう。 |